くまのお母さんは、坊やとお話しする方法を見つけました。
いいえ、坊やがいなくなる前から知っていたんです。
「かぜのでんわ」でお話が出来ることを。
だけど、くまのお母さんは自分が「かぜのでんわ」を使う立場になるなんて思いもしませんでした。
5年前、くまのお母さんの家から山をいくつも越えた海沿いの町に、大きな大きな津波がきて、町はすっかり荒れ果てて、たくさんの大切なひとたちが亡くなって、みんなは途方に暮れていました。
たくさんの悲しみは未だ消えることはないでしょう。
くまのお母さんは、坊やがいなくなってから、津波に消えたたくさんのいのちを思うと涙が出るようになりました。
どんな亡くなり方であっても、大切なひとが突然、この世に存在しなくなることは、とても悲しくてつらくて、どうしようもないのです。
「かぜのでんわ」の絵本は読んだことはありません。
でもいつかきっと、いくつもの山を越えて、本物の「かぜのでんわ」で坊やと話が出来たらと思っています。